未来予想図

 

T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。

 

AIやゲノム編集などテクノロジーの話題に事欠かない現代。

「ビジネスの先行きが読めない」という不安の声をよくお聞きします。

こうした対話のなかで思い浮かぶ言葉が「未来予想図」です。

 

その分野に属している人でない限り、多くの人は技術革新をニュースを通じてある日突然知ることになります。

そのため、「突然とんでもないことが起こった」かのように感じがちですが、技術は過去から続く大きな流れのなかにあると思います。

 

私は偶然、ITとBT(バイオテクノロジー)の分野で「大まかな未来予想図とその後の検証」を経験しました。

今回はその経験を共有させて頂きたいと思います。

 

まずIT。

1990年代後半だったと思います。

当時の経営者の判断で、未来予想図を作ることになりました。

当然、金融の人間だけでできるはずはなく、大手製造業出身の優秀な技術者の方々に多大なるご支援を頂きました。

 

未来予想図は、時系列に「何時頃、こんな技術が出てきて、我々の生活はこんな風に変わる」といった内容を図示したものです。

 

今では当たり前になったオンライン・ショッピング/トレーディング/バンキング、最近話題になっているAmazon Echoのような家庭用AIアシスタント、インターネットであらゆるものが繋がるIoT、これらを先取りしたような言葉が未来予想図には示されていました。

 

当時若年だった私はご説明を伺って凄いなあと思いながらも、正直、全然実感が沸いていませんでした。

 

当時は、Windows95が出て職場にPCが入ってきたとはいえ、PCはデスクトップ型でモニターはブラウン管が主流、動作速度は極めて遅く、ダウンしてしまうこともしばしばでした。

個人の携帯電話ユーザーは増えてはいましたが、PHS(もはや死語?)も併存していた時代です。

 

通信もまだまだブロードバンド(これも死語でしょうか?(笑))ではありません。

スマートフォンもなく、Cloudなんて言葉もなかった時代です。

音声認識の技術も実用に耐える精度には当然ありませんでした。

  

それでも、当時の技術者の方にはビジュアルな映像として「未来」が見えていたのだと思います。

 

私はその後、技術者の方が描いてくださった「未来」を実際に経験することになります。

 

オンラインショッピングを楽しんでいたある日、ふとこの未来予想図を思い出しました。当時の自分には想像できなったオンラインショッピングを、いつの間にか当たり前のように行っている自分。そしてその間の環境変化。そのとき改めて、技術者の方の先見性に驚かされました。

 

その後も技術は進展し、社会は大きく変わっていきました。

そして現在、AI、IoTが盛んに取り上げられています。

 

当時描かれた未来予想図より実現のスピードは遅れてはいるものの、概ね方向性として予想通りになっていると思います。

一方で、当時想定されていなかったことも起きています。

 

同じようなことをBTでも経験しました。

2000年のある日、米国クリントン大統領がヒトゲノムプロジェクトの発表を行い、トップニュースとして新聞の一面に載りました。

 

不勉強でそのプロジェクトをその日初めて知った私は興味津々、俄か勉強を始めました。

あちこちのセミナーや研究会に出没し、関係者の方と対話させて頂きました。

そこで再生医療とも出会いました。

 

いろいろ模索するうちに、BTを支えるITの世界、BTのメリット/デメリット、現在の技術の限界と今後の見通しなどについて、大まかに自分なりの考えを持てるようになりました。

 

また、医療経済など、研究者であればこそ気づかない問題もあることを対話を通じて知ることができました。

学際・業際研究の必要性や産学官連携の重要性にも改めて気づきました。

 

その後、BTの世界も技術の進展が進み、私なりに経緯をある程度確認することができました。

iPS細胞など当時予想できなかったことが起きた一方で、当時から変わっていない問題もあります。

  

私はIT・BTの研究者ではありません。

ブログとして記憶の範囲の記述であるため、内容の詳細・精度についてはご容赦頂きたいと思います。

 

ここでお伝えしたいことは、とかくセンセーショナルに取り上げられがちなテクノロジーの進化を冷静に捉えることと、それを踏まえて行動を選択することについてです。

 

「大きな流れの中で現在を捉える」ことが大切と考えています。

技術の進展はメリットとデメリットをもたらすため、時に喜び・楽しみ、時に適切に怖がり、適切に対応できるのが一番望ましいのではないかと思っています。

 

これをビジネスに当てはめると、私共が考える「変化対応力」ひいては「変化先取り経営」となります。

 

ある科学者は「未来を予測する最善の方法は自分で未来を発明すること」と言ったそうです。

 

外部環境の変化を踏まえつつ、「自社(自分)としてどんな未来が望ましいと思うか」を模索し、そのために挑戦しようとする企業(個人)の応援を引き続き、行っていければ幸いです。お客様と共に望ましい未来に向かって進んで参ります。