T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。
今の時代、インターネットで何でも検索でき、誰もがいつでもどこでも簡単に情報を入手することができます。
個人や企業が情報を発信するのもとても簡単になりました。
一方で、溢れんばかりの情報のなかで、適切な情報を入手するのはかえって難しくなった面があると思います。
レコメンドしてくれたり、キュレ―トしてくれたりするものもありますが、果たしてその情報が適切かどうか。
フェイクニュースも簡単に作れる時代です。
情報の量は増えましたが、質の面では玉石混交。
一定の信頼性や質を伴った情報を入手するには、むしろ従来以上に「目利き力」が必要になったとも言えます。
目利き力をもって絞り込んだとしても、膨大な量の情報に遭遇してしまい、これまたどう纏めてよいかわからなくなる、というケースもあるようです。
ここでは情報の「編集力」が求められているとも言えるでしょう。
何事も、便利になると不便になる、得るものがあれば失うものもある。
と、こんなことを考えていると思い出す出来事が幾つかあります。
かつて(ネット普及前)、適切な「情報を入手する」のは一苦労でした。
例えば、特定の製品・技術・企業や業界を調べる場合にも、どこに関連する情報があるのか、そこから始めなければならなかったのです。
知っていそうな人に聞いたり、図書館やデータバンク、業界団体などを訪ねたり、といった、外に出て人や情報に出会う、身体を使った行動が必要でした。
一見効率が悪そうですが、やり方次第で、実は結構その後の生産性向上に役立ったりします。
出会った人がどんな分野に詳しいのかとか、図書館や各種のデータバンクにはどのような情報があるのかとか、その時必要とする情報以外にも後々使えそうな情報が幅広く脳に蓄積していくからです。
昔は金融やコンサルティング関係者だけでなく、一般の事業会社の企画やマーケティング部門の方々も、こうした「リアル」な身体を使った行動を沢山されていたと思います。
今は効率重視で、ネットや外部委託による調査が多くなり、こうした行動は総じて少なくなっているような気がします。
また、「情報を纏める」といったことも以前は一苦労でした。
手書きでもワープロやPC(Word)を使ったとしても、文章として纏めるにはそれなりの裏付け(根拠としての事実)と、それを踏まえた意見・提案とを繋げた形になっていなければなりません。
上司の赤ペンチェックをもらった方も多いのではないでしょうか?
今はネット上の情報(定性・定量)を使ってコピペで繋げるのは簡単、形式もWordでなく、PowerPointを報告書に使うことも多いようです。
コピペは著作権の問題もありますが、事実なのか意見なのか、意見もどこまでが他者の意見なのかその人自身の意見なのかがわかりにくく、そもそもコピペされた情報の正否がどうなのかも曖昧になりがちです。
PowerPointは絵と体言止めの文言で纏めることが可能で、これまたわかりにくい面があります。
例えば、「●●製品は***販売」と体言止めされていた場合、販売予定なのか、販売開始なのか、どこまでが確定なのか見込みなのか、など曖昧さが残り、プレゼン次第でごまかしもできます。
PowerPointはプレゼンテーションにはよいですが、その場に不在の人が後に見る可能性がある報告書のような場合には不向きな面があります。
更には、「情報の入手・纏め作業」をまるごと第三者に委ねる場合(社内だけでなく、調査・コンサル会社などに委託する場合を含む)は、上述のようなことを踏まえた人が発注しないと望む効果は得にくいです。
某企業では、顧客を理解するために自社で行っていた業界調査や調査結果の纏め作業を、多忙を理由に、外部の調査会社に委託するようになりました。
その結果起きたことは、人材の質の低下です。
顧客を理解するどころか、顧客からどんどん離れていきました。
社内での報告書は委託先である調査会社が作った資料のコピペとなり、調査の質は委託先任せ。
委託先が提示した統計資料の読み方すら社員はわからない。
意見や提案、報告を裏付けるための事実や根拠として提示されているものを説明できないのでは、その意見や提案・報告を経営の意思決定において取り上げることはできません。
人手不足の昨今、第三者の視点を活用するという意味でも、調査・コンサル会社など第三者を使って各種の調査、情報の入手・纏め作業を委託することには意義があります。
問題は使い方です。
目的と手段、メリットとデメリット、ゴールイメージなどを想定したうえで、発注しないと時間とお金が無駄になってしまいます。
社内スタッフに調査などを依頼する場合も同様です。
今後はAIやBIを使って益々、効率化できる部分はあるでしょう。
しかし、情報やITツールを使うのかor使われるのか、はツール以前に問題があるように思います。
I o T時代は人や機器、いろんな情報がネットに上がってきます。
溢れる情報のなかで、情報を経営にどう活かすかの手腕が益々問われてきます。
目的と手段を明確にしたうえで、適切な情報を入手し、纏め、経営に役立てる必要があると思います。
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