T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。
Facebookの個人情報流出の問題がしばらく話題になっています。
信頼を損なえばユーザーの離反を招き、ひいてはFacebookの収入源である広告主を失うことから、ザッカ―バーグCEOも対応に追われています。
Facebookに限らず、Googleの各種サービス、そのほか個人・企業向けクラウドサービス、スマホアプリなどは無料or非常に安価に利用でき、とても便利ですね。
ただ私たちが便利に使っている裏側で、サービス事業者側はネット上に挙がる私たちのデータをこつこつ膨大に蓄積しています。忘れがちですが、ユーザーとしてはそのことをよく留意したうえで利用する必要があります。
スマホの位置情報をONにしたまま、家族や友人と撮影した写真をSNSで公開すれば、いつ、どこで、誰と何をしていたか、が誰にでもわかります。
スマホの位置情報をずっとONにしていれば、自分が一年中どう動いていたかも解析しようとすればできてしまうでしょう。そうした情報を誰にどう開示するのかorしないのか、すでに意図せず開示されているのかorいないのか、そういうことも時には意識してみる必要があると思います。
家計簿アプリを使えば、レシートを写真撮影して家計簿が簡単に作成できます。クレジットカードなど決済と、取引金融機関の預金口座等と連携させれば、より簡単に買い物ができ、家計の管理もできて利便性は高まります。
給与振込口座などとも統一していれば、自分の収入・支出、資産・負債も一元管理ができます。更にこうした自分の情報を基に金融機関から与信を得て、有利な借入ができるようになったりもするでしょう。
また、イベントやセミナー主催者のサイトでは、無料or安価なセミナーへの参加登録の裏側で多くのスポンサーに情報提供を許諾するような文言が付されています。これらの文言は金融機関の約款のように非常に小さい字で沢山記載されており、基本的に読ませない仕組み(笑)になっているので、利用者は気安く「確認」ボタンを押してしまうことも多いと思います。
誤解を恐れずに言えば、自分の意識しない所で自分の情報が第三者に提供されていることは多いと思っておいた方が良いでしょう(個人を特定できない仕組みになっているとしても)。
Amazonのレコメンデ―ション機能に慣れている方は多いと思います。PC、スマホだけでなく、今後はAmazon Echoからも私たちのデータは幅広く吸い上げられ、Amazonに自分の情報がどんどん蓄積されていきます。Amazonはあなたにとって最適な情報をより高い精度で提供してくれるでしょう。そのことを便利と思うのか、気持ち悪いと思うのかは人それぞれです。
私たちが無料or安価にサービスを受けることで提供している個人のデータは、他のデータとも連携してAIで解析すれば、これまでにない価値を生む可能性があります。
一方で、情報が紐づいていくデータ連携社会は利便性も高い一方、ちょっと間違えれば非常に怖い事態を招くことも想像できます。
一般に、利便性とセキュリティはトレードオフの関係にありますから、情報漏洩や悪用リスクなどの懸念は常にあります。Facebookの問題も特別新しい問題とは言えません。
自分が事業者に提供している情報の価値と、自分が受け取っているサービスの価値は見合っているのか、などということも一考に値すると思います。
プライバシーを重視する欧州では、すでにこうした情報の取扱に関して規制に向けた動きが進んでいます。日本はこの点で遅れていると思っていましたが、Facebookの問題をきっかけに議論が進みそうです。
また、便利と思って使っているこうした情報サービスは、他の事業者に乗り換えるとき、契約時には気づかなかった見えないコスト、スイッチングコストが発生することがあります。
個人情報保護、セキュリティに関する意識とは別に、個人や企業の情報の持続性・連続性として、サービス事業者との契約、データのバックアップなどにも配慮は必要です。
古くから言われるように、タダより高い物はない、何事もうまい話には裏がある。
サービス事業者の選定にも留意しつつ、サービスから得られるメリットとデメリットを冷静に考えることは、データ連携が進む社会において、益々、重要であると思います。