答えは「内」にある-舶来品珍重主義との別れ(後編)

 

T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。

 

前編では、欧米、主に米国からの舶来品(理論、手法、IT等のテクノロジーなど)を鵜呑みにすることの危険を改めてお伝えしつつ、外部の専門家(学者、コンサルタント、ITベンダ等)の活用の仕方について触れました。

 

後編は、変革への向き合い方について書いてみたいと思います。

 

大手・中堅企業の経営幹部の方のお話をご紹介します。

 

あるとき、時代の変化に戸惑う大手企業の方が私にこう仰いました。

「今までは先が読めていたんだけど、今は全く読めないんだよね」

 

仰ることの意味や背景は察せられたのですが、ご発言に私はちょっと違和感があって、中堅中小企業の何人かの経営者の方にも伺ってみました。

 

優良経営で知られる、ある中堅企業の経営者の方が仰いました。

「先が読める?そんなときあったかな?」

 

この言葉で私は腑に落ちました。

 

大手企業の方が「読めていた」と思っていたのは、失礼ながらもしかしたら「読める範囲のことしかしていなかった」ということかもしれない、と。

 

事業基盤が堅固な大手企業であれば、それでも大きな問題にはなりませんから。少なくとも今までは。

 

私がお世話になった大学院の研究科名はイノベーション・マネジメントでした。

 

マネジメントにわざわざ“イノベーション”と付け加えなければならなくなっているところに、昨今の日本企業におけるマネジメントの狭義性を感じました。

 

不確実性に富む外部環境下での舵取りは、常に革新性を求められるはずで、そもそも「マネジメント≒イノベーション・マネジメント」ではないのかと。

 

イノベーション・マネジメントという言葉が必要になってしまったこと自体が、ある時期から「マネジメント≒オペレーション・マネジメント」になってしまっていたことを表しているのではないかと。

 

そんな風に考えるのは、前述の中堅企業の経営者同様、私もベンチャー企業のような不確実性の高い世界に長く身を置いていたからかもしれません。

 

外部環境は常に変化しており、確実なものなどそもそもないはずです。

 

それなのにいつの間にか視野を狭め、振れ幅の少ない、見える/読める範囲を特定の範囲として、特定の業務を安定的に「運営」するために経営資源が使われてしまっていたのではないか、と。

 

戦略は戦うことが前提です。マーケティングは市場が前提です。

その前提自体を問い直す時期に来ていると思います。

 

変革の時代、戦うことや戦う相手、市場の定義も変容していくと考えられます。

 

混沌としているなかで敢えて言うならば、意識、無意識に置いている点(視点や起点)を従来と変えること、点から線、面へ視野を広げることだと考えます。

 

戦う相手は他者ではなく、最終的には自分であり、製品やサービスは自分起点ではなく、他者起点で提供を考えるということです。

 

当たり前のようでいて、意外とその逆になっているケースがまだまだ見られます。

 

自社の収益やメリット優先で、“売らんがな” の姿勢がいまだ変わらない企業は、残念ながらまだ多いのが現状です。

 

これまでも同種同業界の狭い範囲で見える相手との戦いに気を取られているうちに、格下と思っていた予想外の企業に追い越され、倒産した企業がありました。

 

いつまでも互いに自己の利益を主張し合い、モタモタと社内外で争っていると、漁夫の利を取られてしまうことになるでしょう。

 

他方、そうした動きとは一線を画す企業がいつの時代にもあります。

このタイプの企業は変化先取り型で柔軟性と機動力を持っています。

 

自分軸を持ちながらも、アンテナを高く持ち、外部環境の変化を見ながら、他者起点で自社は何ができるか、どう貢献できるかを常に考え、自社を見つめ直し、製品やサービスを世に問い続けてきた歴史があります。

 

こうした企業は外部の変化に一喜一憂したり、舶来品を参照することはあっても妄信したり、鵜呑みにしたりはしません。

 

変革が進まない企業は、従来と同じ視点で、狭い視野で物事を捉えがちです。そうなってしまうのは、視座が固まっていないからです。

 

舶来品は参考にはなりますが、答えはくれません。

変革の時代は、視点を変え、視野を広げ、しっかりとした視座の下、経営することが求められます。

 

第三者を対話相手として、第三者の視点や視野も活用して、「内」にある答えとチカラを引き出してみてはいかがでしょうか?

 

日本発で世界の人の心を惹きつけるような価値観やライフスタイル。

見えないところで困っている人々に喜ばれるような革新的な製品やサービス。

 

自社の存在意義や提供する価値を問い直し、自社の製品、サービスを世に問うていこうと挑戦をする人や企業を今後も応援して参りたいと存じます。