T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。
幾つかの理由から、講演でも研修でもコンサルティングでも、私は相手の方々に外部環境の変化を自分事にして頂くこと(自分ごと化)に拘っています。
「自分事とは何か?」は他人事の反対と考えれば理解しやすいです。
他人事とは他人の事、自分には関係のない人のこと、自分には関係のないことです。
個人も企業も自分(自社)以外の外部からいろんな影響を受けていますが、日常それが意識されることはあまりありません。つまり、多くは他人事と見做されているのと同じです。
人間は自分(自社)に関係がある(自分事)と認識できることには対応できますが、そう思っていないことには対応できません。
このとき、「関係があると思っている範囲、自分事としている範囲」は人や企業によって異なります。
この範囲を狭く捉え過ぎていると環境変化に適応することが困難になります。
ところで、私が中小企業向けのコンサルティングを始めたのは知人からの依頼がきっかけでした。
ベンチャーキャピタルでベンチャー企業とのお付き合いを長くしていた経験もあり、お役に立てればとお引き受けしたわけです。
※ある段階まではベンチャー企業も中小企業に当たる。詳細は中小企業基本法を参照。ここでいう中小企業はいわゆる既存の、急成長型ではない企業。
中小企業の経営者と対話してすぐに気づいたことが次の2点です。
① 自社の強みを説明できないこと
② 取引先やその周辺のことについてご存知ないこと
上記の①は内部環境、②は外部環境と言えます。
自分のことを客観視するのは個人も企業も難しいので、①はある程度は理解できます。
しかし、➁について認識できていないことは経営上、非常に危険なことなのでとても驚きました。
中小企業は大手企業の下請に代表されるように、顧客の依頼事項に対してQCDに配慮しながら、それぞれ独自に現場で工夫、改善をしながら顧客の要望に一生懸命応えようとします。
それは素晴らしいことなのですが、どうしても姿勢として受け身、受動的になりがちです。
そのせいか、自社の顧客のその向こうに何があるのか、背景に目がいっていないことが多く見られます。
自社が納めた部品が顧客のどんなところでどんな風に使われていて、最終製品のどこに当たり、その最終製品はどんな需要に基づき、どこで発生しているものなのか、をすぐに答えられる経営者は多くありません。
受注好調で営業利益が億単位を計上しているような中小企業の経営者でも、自社がなぜ選ばれているのか、その受注の背景に何があるのかを答えられなかったりします。
長い経営経験で培った勘と感で荒波を乗り越えていらしたような方でもそのような状態にあることに大変驚きました。
変化の激しい時代にこれではいずれ変化に対応できなくなるのではないかと懸念したのです。
対照的なのがベンチャー企業です。
ベンチャー企業は外部環境の変化を敏感にキャッチし、あるいは変化を自ら創り出し、それを可能とする自社の強み(内部環境)を強く認識しています。
そもそも、そうでなければ、事業をゼロから形にすることはできないし、そのために必要な経営資源(人財や資金)を調達することもできません。ベンチャー企業は能動的です。
今は中小企業も大手企業も大胆な発想による第二創業が求められる時代です。
ベンチャー的な思考、行動が求められています。
大手企業に帰属する個人であっても会社任せの受け身ではいられない状況になってきました。
企業も個人も、既存の取引先任せ、帰属する会社任せの受け身のときは無意識に他人事で済ませていたことを自分事として捉えることが必要になってきています。
個別コンサルティングでは一部の人の自分ごと化しかお手伝いできません。
外部環境の変化をより多くの人が自分事とできるよう、自分ごと化のための講演や研修を行っています。