· 

中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)

 

T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。

 

ここのところ、IT関係者からのご依頼で、中小企業の方を対象にIT利活用に関するセミナーの基調講演をさせて頂くことが続きました。

 

先日の講演で面白いことがありました。私の後に続くITベンダの講演者が講演中に使う言葉がそれぞれ違ったのです。OAIT、デジタル・・・。

 

OAoffice automation:オフィス内の事務作業の自動化・効率化)、久しぶりに聞いた言葉でした。

大雑把に流行り言葉に直すと、RPARobotic Process Automation)になりますね。

お話を聞いていて、講演者の方の入社時期がわかるような気がしました()

 

さて、掲題のデジタルトランスフォーメーション。

 

なぜ今までITと言っていたのに、急にデジタル?

トランスフォーメーションって結局何?

 

私がお話するときは、ITITであることは変わらない。変わったのは以下の2点と伝えます。

 

    ITが加速度的に進化し、ITができることが格段に広がった

    ①により、個人や企業を取り巻く環境が今までと異なるレベルで激変していく

 

①は自社でITを利活用するための理解(何ができるか、どう使えるか)、②は外部環境の変化に対する理解(何が起きているか、自社にどう影響するか)となります。

 

世にありがちな煽動的なカタカナ言葉や外来語の使用は個人的に好みませんし、講演でも私はDXという言葉をまず使いません。

 

しかし、DXという言葉が➁の劇的な変化、次元が変わったことを伝えようとして、あえて長く使われてきた「IT」ではなく「デジタル」を用い、形を変える意味合いの「トランスフォーメーション」という言葉を選んだとすればそれはそれで首肯できます。

 

①を伝えるだけなら、デジタル化(Digitalization)という言葉である意味十分です。

ここでもIT化と言わず、デジタル化という以上、昔と何が変わったのかを伝える必要があります。

 

上記①の表現に加えて、変わった点は手軽さです。

人的・資金的負担が大幅に軽くなり、中小企業が利用しやすくなりました。

 

➁を伝えるのはなかなか大変です。

次元が変わる、今まで見たこともない世界が実現しようとしている転換期の今、認識するうえでの想像力には個人差があるからです。

 

中小企業の方々にお伝えするには伝わるための工夫がとりわけ必要になります。

 

そもそも中小企業といっても多種多様。

中小企業のDXについて以下、イノベーター理論をやや解釈を変え、応用して私なりにご説明します。

 

イノベーター理論では「イノベーター(革新者)」「アーリーアダプター(初期採用者)」「アーリーマジョリティ(前期追随者)」「レイトマジョリティ(後期追随者)」「ラガード(遅滞者)」の5つの層があります。

 

イノベーターに該当するのはベンチャー企業、最近でいうスタートアップ企業(スタートアップ企業も基準で言えば中小企業)。この層はDXの流れを作る側です。

 

アーリーアダプターはイノベーターが作った流れにいち早く適応できる事業者で、新旧2種類あります。

 

ひとつは、クラウド、スマホ、ウェアラブルといった今のデジタル環境をベースに近年起業した中小事業者(初めからデジタルなのでトランスフォーメーションは不要)。

 

もうひとつは、伝統的ながらアンテナの高い中小企業具体例で言えば、旭鉄工さんや陣屋さんのような企業。トランスフォーメーションという点からすれば、こちらの企業がDXに取り組んでいる企業と言えるでしょう。

 

DXはデジタルによる変革で、ビジネスモデルの転換が必要です。

事業、収益の構造を変え、組織を変え、社員の抜本的な意識改革が必要になります。

 

本来、DXは既存の事業基盤を抱える大手企業こそ取り組まなければならない問題です。

すばしこい既存の中小企業がこの機をチャンスに変え、DXに取り組めればそれはそれでよいですがそうはいかないでしょう。

 

多くの中小企業はアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードに当たり、DXよりデジタル化の検討が必要になります。

 

アーリー/レイトマジョリティに属する企業は、まずITの利活用により人手不足といった目先の問題を解決して余力を生み出すことが先決でしょう。余力ができて初めて、事業や経営の高度化にどうITを活用していくかを考えることができます。

 

ラガードはデジタル化に取り組むことのないまま、自分の代で廃業しようとする中小事業者 or アナログだけで完結したい事業者になります。

 

レイトマジョリティからラガードへ後退する事業者を減らす、事業承継をしやすくする、これらのためにもデジタル化への取り組みは必要でしょう。

 

元来、多くの中小企業は外部環境の変化をキャッチしにくい傾向にあります。

今度の変化は従来とは大きく異なるものです。直接・間接的に大手企業の影響を受ける中小企業は、大手企業が時代の変化に適応できないときに備えておく必要があります。

 

いずれにしても必要なのは、①でも➁でも自分事とする「自分ごと化」。

 

アーリー/レイトマジョリティに属する事業者様、事業者にITツールを使って欲しいIT企業様、これらの方々の自分ごと化に関するご相談に応じております。