T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。
最近、講演のご依頼を頂くことが増えました(ホームページでご案内しているのはその一部)。
自称「自分ごと化セミナー講師」(笑)としては、「伝える」講演ではなく、「伝わる」講演とすべく、日々、努力をしています。
講演後に参加者や主催者の方からご質問やご感想を頂くのですが、「わかりやすかった」「課題が明確になった」といったお言葉を頂くと、「情報が届いた」「自分事にして頂けた」とこちらも嬉しくなります。
経営においては外部環境の変化を適時適切に捉えることが求められますが、そうした変化を自分事として捉えられないケースはまだまだ多く、だからこそ私は自分事にこだわって講演や研修をしています。
昨今では、アンテナの高い経営者の方でも変化を自分事とすることが難しくなってきています。
その理由は主に以下の3つにあると思います。
① 情報の量が多過ぎる
② 目配りすべき情報の範囲が従来の比ではなくなっている
③ 情報を伝える専門家の話がわかりにくい
最初に、情報の量の問題。
現代は情報過多。情報の量は多いけれど、質はバラバラです。私たちは情報のカオスにいます。
忙しい経営者の方が限られた時間で自分(自社)に必要な情報を効率よく入手することは難しくなっています。
次に、情報の範囲の問題。
ITに代表されるように技術の進化とそれがもたらす変化は目まぐるしいものになっています。昔と比べて注意していればよい情報の範囲が拡大しています。
例えば、自動車メーカーの人であれば国内の、そして海外の自動車関連について知っているだけで昔は良かったことでしょう。市場調査の対象は自動車市場、競合は自動車製造業だけで良かったのです。
ところが今はITでいろんなものが繋がる時代。モノという製品ではなく、サービスで事業を考えなければならない時代。市場も競合も劇的に変わり、従来と同じ情報収集では済まなくなってきました。
リアルとサイバーが融合し、競争相手もころころ変わる、そんな状況です。注意を向けなければならない範囲が広くなり過ぎて、膨大な情報を集めたものの消化不良になっていたりするケースもあります。
最後に、そうした情報を伝える専門家の問題があります。
外部環境の変化を伝える人は沢山います。デジタルトランスフォーメーションだとか、Society5.0だとか、働き方改革だとか、大仰な、抽象度の高い言葉が盛んに飛び交う一方、メディアの報道や多様な専門家の話に当惑気味、混乱気味の経営者の方にもよく出会います。
そう、メディアや専門家は伝えているのですが、聞いている方に伝わっていないのです。
情報を受けた人が次の行動に移せる状態になって初めて伝わったといえます。
人は情報を自分事として受け止められないと必要な行動を取ることができません。
そのような伝え方が専門家からなされることはまだまだ少ないと感じています。
専門用語で話す専門家はあらゆるところに存在します。これでは伝わりません。
ITでも法律でも金融でも医療でも何でも、いわゆる「専門家」が存在するところでは専門用語が飛び交います。専門家にとって当たり前の言葉は情報の受け手にとって当たり前でないことは多いです。情報は伝わるように”編集””翻訳”する必要があります。
情報が適切に伝わらなければ、事業変革のような戦略的かつ中期的な取組どころか、働き方改革関連法への取組など目先必要とされる対応すらも難しくなってしまいます。
経営者の方が変化を自分事にできたら、さらに現場の社員にも自分事にしてもらう必要があります。このように自分ごと化が進むことで初めて、組織として変化に対して機動的に行動することができるようになります。
自分ごと化を必要とする方々に、情報を編集・翻訳して、適切な範囲と適切な量で、ストーリーのようにわかりやすく伝える、自分事として頂くための工夫をこれからもして参りたいと思っています。
宜しければ以下もご参照ください。