ホワイトボードと組織風土

 

T&Iアソシエイツ代表の田中薫です。

 

ホワイトボードはどんな企業にも大概置いてあるのですが、その使われ方、使われている場面などを見ていると、その組織の風土が窺われてなかなか興味深いです。

 

(昔、企業審査の仕事を長くやっていたこともあり、ふと目にしたことからその企業の状態をすぐ想像してしまう癖があります()

 

ホワイトボード、従来の使われ方(固定的、硬直的)に留まっていませんか?

 

90年代くらいまで(企業や現場によっては今も)、職場で一番身近なホワイトボードと言えば罫線が引かれているものではないでしょうか?

 

罫線が引かれたホワイトボードには、部署のメンバーの名前や行き先、帰社予定が書かれていたり(行動予定表)、会社の当月の主な予定が書かれていたり(月行事予定表)していました。

 

組織を構成する各メンバーや組織全体の行動やスケジュールに関するこうした情報は、その後、PCの普及やグループウェアの登場等によってホワイトボードからPC内に置き換わっていきました。

 

そして、ある時期からは罫線のない真っ白なホワイトボードが増えました。

研修施設のような特定の用途、特定広さの場所に限らず、いろんな会議室・現場に真っ白なホワイトボードが置かれるようになりました。

 

ただ、残念なことに上手に活用されているケースはまだ少ないと感じています。

 

驚くことに相応の規模の会社で企画系の仕事をされているような方でも、特に中高年層でホワイトボードの活用に不慣れな方をお見受けします。

 

ぜひ、ホワイトボードの効用をよく知って頂き、業務改善や新商品・新規事業等に関する議論の場でもっと積極的に活用して頂きたいと思います。

 

ホワイトボードの効用として次の3が挙げられます。

 

    情報の見える化・共有化

    発想や思考の拡張

    発言内容と発言者の人格の分離

 

前述の通り、予定などの情報はPC内にシフトしていますから、ホワイトボードで見える化・共有化すべき情報は昔と変わってきているはずです。より創造的なことが求められる時代ですから、それに応じた情報が見える化の対象となるでしょう。

 

ホワイトボードに書かれることで情報は見える化され、見える化されることで共有化できます。共有できた情報(①)をもとに参加者の発想や思考を拡張(②)することができます。

 

ホワイトボードは参加者が議論の前提を共有しながら、互いに意見を出し合い、新たな気づきを得て、さらに多くのことを思いつき、考えを展開していくことを助けてくれるツールです。

 

ホワイトボードを使うことで空中戦による時間の浪費を避けることもできます。

 

気づかれることは少ないのですが、隠れた効用として③があります。

私はむしろ発言内容と発言者の人格の分離こそがホワイトボードの最大の効用であると思います。

 

日本では➁が苦手な人や組織が多いです。積極的に発言できない人も多く見られます。

これらの人はアイデアや意見をもっていないのではなく、発言しにくい、発言できない理由をもっています。

  

その理由の根底に「発言内容=発言者の人格」と無意識に捉えていることがあります。

 

ホワイトボードを使わずに議論をすると、発言者は自分の発言に対して他者から否定的な意見、異論、反論を受けたとき、自分自身を否定されたような気持になってしまうことがよくあります。

 

逆に、他の参加者も発言者に遠慮して反論や異論を唱えるのを躊躇してしまうことがあります。

 

ホワイトボードに発言内容を書くことで発言内容と発言者の人格を切り離し、相互に自由に意見が言える状態を作る(自由に議論できる場づくり)ことができます。

 

真っ白なキャンバスに絵を描く。ビジネスでも今、そんな感覚が求められています。

罫線もない真っ白なホワイトボードは自由な発想や意見を自由に書くことができます。

 

自由でないのはそれを使う人です。

その状態を変えるひとつのツールとして、ホワイトボードをもっと活用してください。

 

議論が活発な組織ではホワイトボードが上手に使われています。

安心して自由に発言できる風土があります。発言を否定されない、失敗を恐れない風土があります。

 

そのような風土をもった組織でなければ、これからの変化に適応する/変化を産み出すようなことはなかなか難しいと思います。

 

なお、ホワイトボードの活用にはファシリテーションなど他のスキルも必要になります。

ホワイトボードの効果的な使い方、建設的な議論の進め方にはテクニックも求められます。

 

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