新型コロナウィルスとBCP(事業継続計画)

 

TIアソシエイツ代表の田中 薫です。

 

動向を注視していた中国の新型コロナウィルスが国内でも発生し、クルーズ船、横浜といった限定された場所や地域から日本各地で散見されるようになりました。このような状況を受けて政府は対策の基本方針を決定、国民、事業者にも協力が呼びかけられました。

 

さて、皆さんの会社では新型コロナウィルスへの対策はどのように進んでいますでしょうか? 刻々と変わる変化に対応できる状態になっていますでしょうか?

 

「うちは大丈夫」「いや不安」、どちらの方もまずは以下の順に確認or検討されてはいかがでしょうか?

 

    現状の確認

(ア) 今、起きていることへの理解

(イ) 今、行っている自社の対応のリスト化と妥当性検証

 

    今後の対策

(ア) 今後、起きることへの理解

(イ) 今後、取り組もうとしている内容のリスト化とその妥当性検証

 

変化に対応するには今何が起きているか、今後どのようなことが起きるかをある程度想定、理解しておく必要があります。適切な情報を入手し、起こりうる事態を複数想定し、シナリオを考えておくのです。“事態がこう動いたらこう行動する”という予備のプランを用意して、それに応じた行動が取れるように準備しておくと不安は抑制され、慌てることが少なくなります。

 

まずは思いつくこと、できるところから書いてみてください。書くこと、リスト化、見える化することで経営者自身、頭の整理ができますし、取り組みや方針、方向性を示すことで周囲の人も安心します。社員や顧客等から理解や協力を得やすくもなります。

 

今後を考えるうえでは例えば以下のように、段階毎に対策を練っておくと良いと思います。

 

    現状のまま事業を継続する場合

    働き方、業務や商品・サービスの提供の仕方を変えながら事業を継続する場合

    事業を縮小する場合

    事業を休止する場合

    事業を再開する場合

 

仮に社員が感染者となればその影響範囲を鑑み、①oror+②を選択することになるでしょう。電通では感染者が本社勤務だったので②が選択されましたが、遠く離れた支社に感染者が出た場合、本社は①、支社は②のような選択も考えられます。長期休暇中の社員が感染者となった場合であれば①が選択可能なこともあるかもしれません。

 

感染者が会社の重要人物、社長や高度な技能者等であれば、代替者の確保が問題になります。技能やスキルの移転が障害となる事業者もあるでしょう。

 

感染者はなくとも濃厚接触者として社長や社員が自宅待機となれば、自宅での業務継続が可能か否かも問題になります。電通のようにすぐにテレワークに入れる環境にあるでしょうか?

 

私も日頃、ITを活用した働き方改革や生産性向上の講演などしておりますが、まさにここはITを活用して生産性を維持・向上させていただきたいところです。業務の棚卸、見直しをして上手にITを取り入れて頂きたいと思います。意外と“要らない会議”が多いことも判明してくるのではないでしょうか?

 

工場や顧客と接する飲食店、サービス業の場合はどうでしょう?

社員や顧客に感染者が出た場合、小さな事業者であれば一気に➂④に進んでしまう可能性も考えられます。

 

一方で提供側ではなく、需要側で見るとどうでしょうか?

 

当初は「中国」や「インバウンド」をキーワードとした事業者が新型コロナウィルスを自分事として考えていたと思います。売上に直結する売るモノ、売る相手(ヒト)がいなくなる懸念を直接感じるからです。

 

中国から製品や部品を仕入れたり、中国人の観光客に商品・サービスを販売したり、といった製造業・小売業・サービス業(旅行・交通・宿泊等含む)のような事業者です。在庫や予約・キャンセル状況を見ながら代替となる取引先を探し、考えていらしたと思います。

 

加えて今後は国内のイベント自粛による影響が出てきます。

既にサッカーの試合やコンサートの開催自粛の動きが出ています。

人が集まる施設、展示場、コンサートホール、劇場や映画館等の運営者に加え、こうした興行に関係するサービス・物販事業者と影響は多岐に亘ります。

 

既にインバウンドで打撃を受けている旅館・ホテル等の事業者には国内イベントの開催中止、旅行や宴会等の自粛はダブルの痛手となってしまいます。卒業式、歓送迎会など宴会の多い季節に入るため、飲食店の事業者にも影響が懸念されます。

 

政府からさらに踏み込んだ発言があるかどうかは今後の動向によりますが、事業者の体力次第で➂から④の検討に入っているところもあるかもしれません。倒産事例が出てしまう懸念があります。自社が大丈夫でも取引先が影響を被っている可能性もあります。ビジネスはいろんな形で繋がっているからです。

 

シナリオを考え、最悪の事態も想定して、運転資金の目途を付けておく必要があります。

新型インフルエンザでは2カ月程度の運転資金が目安とされていましたが、今回は厳しめに見積もっておいた方が良いかもしれません。まずは資金繰りを注意深く検証してください。

 

➂④が行われた場合、影響が落ち着きそうとなれば➄も検討しておくことになります。

 

社員を守る、お客様や取引先、地域を守る、技能を、事業を、会社を守る。

 

そのために前もって準備をしておく。そのために事業継続性を事前にプランニングしておくBCP(事業継続計画)というものがあります。非常時にできること、選択肢というのは時間の経過とともに減っていきます。事前のシナリオにどれだけ織り込んで準備ができているかが勝負になってきます。世に完璧はありませんが、”想定内”を増やす努力は必要と思います。

 

なお、一般的なBCPのマニュアルでは中核事業を特定重要業務を把握ボトルネックとなる経営資源の洗い出し中核事業が受ける被害の評価財務状況の分析などをして事前の対策を準備運用によって定着を図っていく流れになります。

 

BCP策定済みの事業者は既存のBCPに基づいて行動or BCPの見直しを現在しておられるでしょう。ただ今回、BCPに盛り込めていない事情も多いのではないかと思いますし、BCP未済の事業者はBCPをじっくり検討できる状況にもないと思います。このため、マニュアル的な伝え方ではなく、前半のような説明にさせて頂きました。

 

自宅待機者や在宅勤務者の取扱いなど就業規則・労務管理に関わること、職場での感染防止策の実施など労働安全衛生に関わることなどは人事・労務関係、取引先も含む契約など法務関係、運転資金に関わることなどは財務関係といろんな目配りが求められます。

 

緊急時には事態は刻々と変わりますし、これに対応する事業者の事情も様々です。 

新型コロナウィルスへの緊急対策、自社の経営を強化するために取り組む戦略的なBCP、どちらのご相談も承ります。お問い合わせはこちらからどうぞ。

  

※なお、感染予防については情報もお持ちで既に対応されている事業者も多いと思うのでここでは触れませんでした。